2022年5月に突如起きたステーブルコインUSTとLUNAの大崩壊は暗号通貨史上に残る大きな事件でした。USTもLUNAも数日で99%下落しほぼ無価値となりました。
USTショックとかLUNAショックとか呼ばれそうですね。
BTCを買い増し続け、潤沢な資金を持っていたはずの団体LFGが運営するステーブルコインUSTが突然崩壊したわけですから、ステーブルコインとは?価値の担保とは?攻撃方法は?犯人は?
様々な情報が飛び交いました。
今回LUNAのショートチャンスに乗れなかった筆者が、次の機会を逃さないためにまとめた備忘録となっています。
まさかこんな一方通行で暴落するとは思わんかったんよ…
LUNAのチャートとUSTチャート推移
以下でLUNA/USDとUST/USDのチャートにざっくりと時系列を記載しました。
LUNAの暴落の前にUSTのペッグが2%ほど外れたのが兆候でした。
USTがステーブルコインとなる仕組み
簡単にいうと、USTを発行するとき同価値のLUNAをバーンすることで価値を担保するというものでした(過去形)。
たとえば、LUNAが50ドルだった時、1つのLUNAを50USTと交換でき、その過程でLUNAはバーンされます(燃やされます)。
Anchorのステーキング報酬で19.5%の高利回りを提供しトレーダーを集めていました。
1USTはいつでも1ドル相当のLUNAと交換できます。したがって、USTが99セントに下がった場合、トレーダーは大量のUSTを購入し、それをLUNAと交換することで利益を得ることができ、トークンごとに1セントの利益を得ることができます。
以下でもう少し詳しく、どのような攻撃が起きて崩壊まで至ったかを解説します。
$USTと$LUNAはいかにして崩壊したのか
以下でRoute2FIさんのツイートを参考にまとめてみました。2022年5月8~13日の5日間に何が起こったのか。
USTショックは何者かの攻撃
まず前提として、このUST騒動は莫大な資金を持つ攻撃者による意図的に引き起こされたものだと言われています。自演かもしれないし真相は不明です。
攻撃が成功するために実行された4つのポイント。
- 攻撃者はGeminiから10万ドルBTCを借りた(彼らはショートしている)。
- 攻撃側は、OTCで10億ドル分のUSTの取引を行う。
- LFG(Luna Foundation Guard)がペグを守る防衛策として3月と4月に担保として$BTCを購入する。
- 3poolから4poolへの切り替えの発表。
※LFGはLUNAチェーンとUSTを運営する非営利組織
Curveで何者かによる大量の売り
すべては、Curveの大規模な売りから始まりました。
UST運営がCurveで運用資金を3pool→4poolに移動させるとき攻撃者の大口による8500万ドルのUSTからUSDCへのスワップがあり、3poolはわずかにバランスを崩しました。
Curveプールのバランスを戻すため、5万ETHが売られ、さらに2万ETHがBinanceに送られました。
次に、何かが起きているという噂がTwitterで一気に広まりました。
取り付け騒ぎに発展
これがきっかけで、Anchor上で$20億USTの引き出しが発生します。
1ドルで固定されているはずのUST/USDペグが0.987-0.995の間で動いています。
最初の防衛は成功するが、ペグが完全に回復することはありませんでした。
プールの流動性を枯渇させデペッグさせた
LFGは新しい4poolの準備のために、Curveの3プールから$1.5億USTを削除しています。
そして攻撃者は、OTCで購入した$3.5億USTを使ってCurveプールを枯渇させました。
これによりCurveの流動性はゼロになり、ペグは0.97-0.98まで下がりました。
Anchor上の預金が急減
噂はすぐに広まり、最大19.5%の利回りを提供していたアンカーの預り金は、6日の140億ドル(約1兆8000億円)から9日には87億ドル(約1兆1000億円)まで急減しました。(参考)
文字通り1分間に1000万ドルずつ預金が減っていき、完全にパニック状態でした。
ペグが0.97ドルになり、人々は怯え、その上ナスダックと株式市場は強い下落相場、BTC価格の下落、アルトコイン価格の下落につながり、LUNA価格も順当に暴落していきました。
負の売りスパイラルが完成
しかし攻撃は続きます。
攻撃者は当時6.5億USTを残しており、それを徐々にBinanceで投げ売りし続けました。
それによって大規模なデペッグが発生。
デペッグを戻そうとLFGが介入し、BTCを売ってUSTを買いますが後の祭りでした。
負の売りスパイラルの完成です。
売りスパイラルの流れ↓
- -攻撃者が$USTをダンピング(投げ売り)
- -LFGがUSTを買ってペグを元に戻そうとする(BTCを売る)。
- -売り圧力が強く、BTC価格が下がる。
- -USTのペグがさらに外れるため、パニックになる。
- -アンカーへの預け入れが減少→取引所でUSTをどんどん安く売ろうとする。
- -これにより、USTに新たな売り圧力がかかり、さらにデペッグが進む。
- – LUNA / UST の仕組みへの不安から、LUNA の価格が暴落。(UST売り=$LUNAの流通量増加=$LUNA価格下落)
- -トレーダーは$LUNAをショートし始め、LUNA価格がさらに下落、またUSTもショートする。
- -暗号通貨取引所はUSTの引き出しを禁止し始めパニック状態に。
- -LFGはこれは勝てないレースだと理解し、デペッグを諦める。
$UST / $USDTは最終的に$0.01以下まで下落しました。
LUNAを売りたくても売れない被害者
この中で一番損失を被ったのは、LUNAチェーンで24日間の引き出し期間のために、保有LUNAを売ることができず、激減していく資産をただ眺めることしかできなかった人です。
すべてがあっという間の出来事でした。
そして5月13日1時頃、深刻なLUNAインフレと攻撃コストの大幅な削減に続くガバナンス攻撃を防ぐために、Terraチェーンを停止しました。~終~
UST暴落の犯人は誰なのか?
誰がやったのか?現時点ではわかりません。
CitadelとBlackrockが関わっているというFUDもありましたが、決め手となる証拠はありません。(参考)
また、運営のLFGが担保用BTCを未だに売却していないという情報から、自演か?という疑惑も残ります。(参考)
このUSTショックから得られる最大の教訓は、
「自分の全資産を1つのエコシステムに置くことはない」
ということでしょう。
AnchorやTerraをベースにした全てのアプリ、Cosmosのエコシステム、ステーブルコインへの信頼、DeFi全般への信頼、そして市場全体の一時的なダウンなど、その波及効果は甚大です。
攻撃者はいくら稼いだのか?さらに詳しい解説はこちら(英語)
アルゴステーブルコインは潜在リスクを抱えている
今後もこのような暴落劇が起こるのか?
BitMEX元CEOアーサーの記事を参考に以下に紹介します。
LUNAは、Web3商取引でUSTが使用されるほど、より価値があると認識されます。
このミントアンドバーンメカニズムは、UST人気が高まっているときに優れていますが、USTがそのペグを下向きに保つことができない場合、USTを取り戻すためにLUNAが無限にミントされる死のスパイラルが起きます。
全てのアルゴステーブルコインは、ガバナンストークンとペグされたステーブルコインの間に、ある種のミント/バーンの相互作用を備えています。
しかしDAIなどを除くほぼすべてのアルゴリズムのステーブルコインは、死のスパイラル現象で見事に失敗しました。
ガバナンストークンの価格が下落した場合、ペグされたトークンを裏付けるガバナンストークン資産は市場から信頼できるとは見なされません。
その時点で、参加者は今回のUSTとLUNAのように、前回のTitanとIronのようにペグトークンとガバナンストークンのダンプを開始し、死のスパイラルが始まります。
市場への信頼を回復することは困難となります。
USDTやUSDCのように米ドル等でしっかり担保してあるステーブルコインはともかく、アルゴリズムのステーブルコインがなくならない限り、このような事件は今後も起きそうな予感がしますね。
USTとLUNAの顛末まとめ
ステーブルコインUSTとLUNAが崩壊した理由と顛末について海外の情報を参考にまとめてみました。
ビットコインはともかくとして、全てのアルトコインに攻撃されるリスクが内在しているということを理解しておくことが重要だと思います。
「卵は一つのカゴに盛るな」ということわざがありますが、自分の全資産を1つのエコシステムに置くことはしないようにリスク管理をしましょう。
また、今回のUSTのようなアルゴリズミックステーブルコインの価値の裏付けはどこにあるのか?
欠陥があるとすればどのような崩壊シナリオがあるのか?その時どう立ち振る舞うべきなのか?
トレーダーとして見ても、今回のLUNAショートのようなおいしいチャンスをものにできるかもしれません。
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