一般的に「米金利が下落すると株価は上昇し、金利が上昇すると株価は下落する」と言われています。本当でしょうか?
そしてTeslaをはじめ多くの機関投資家やS&P500上場企業に買われているビットコインは、今や株価との連動は避けられないと考えられます。
では米金利や株価はどのような原理で連動するのか?実際どの程度連動しているのか?
そしてビットコインとの連動は今後も続くのか考察してみます。
米長期金利/短期金利とは
米長期金利とは
長期金利とは、投資家や銀行が中央銀行にお金を貸すときに受け取る金利(年利)のことです。
長期金利は1年以上の金利のことを指しますが、一般的に米10年国債の金利のこと指します。
米10年国債とは、アメリカ合衆国財務省が発行する10年満期の国債のことで、これを購入することで得られる金利が長期金利ということです。
機関投資家等は、財務省が発行した10年満期の国債利回り(長期金利)を加味して入札を行います。債券の実際の利回りは、表面利率に入札価格による損益が加えられ算出されます。
オイルショックの頃(1970年代)長期金利は10%を越えていましたが、バブル崩壊後から現在1~2%に落ち着きました。
コロナショック後一時0.5%を割り込みましたが、経済回復期待により徐々に上昇しています。
短期金利とは
短期金利とは1年未満が満期の国債金利を指します。政策金利、FF金利とも呼ばれます。
短期金利は、中央銀行が金融政策(利上げ、利下げ、量的緩和等)によって、民間銀行にお金を貸す時に受け取る目標金利です。
短期金利を調節することによって通貨の流通量を調整することができます。
また、短期金利はFRB(連邦準備制度理事会)の金融政策で決定されます。
長期金利と短期金利の関係
短期金利(=政策金利)と長期金利には大きな違いがあります。
すごく簡単に言うと以下の点で異なります。
- 短期金利=政策(利下げや利上げ)によって国が調整できる。
景気状況の天井/天底を見定めた後段階的に動かす。 - 長期金利=短期金利に将来のインフレ率などを加味して市場で決まる。
市場参加者の景気感を敏感に反映し動く。
長期金利と短期金利は連動している訳では無い
ただ、政策(短期)金利の引き上げ=利上げ(引き下げ=利下げ)が予想されたとしても、必ずしも長期金利が上昇するというわけではありません。反対に、長期金利が上昇したからと言って短期金利も上昇するというわけではありません。
利上げ(利下げ)局面での長期金利の動向
利上げとは短期金利(政策金利)を引き上げること、利下げとは引き下げることです。
短期金利の利上げ(利下げ)の直前後では長期金利も一時的に同じ動きをすることもありますが、段階的引き上げの場合は逆に低下することもあります。
景気感をリアルタイムに反映する長期金利の方が見る機会が多い。
金利には四季アノマリー(季節要因)がある
景気には四季があり、春(回復)・夏(過熱)・秋(減速)・冬(後退)を繰り返すと言われています。あくまで目安です。
春 | 夏 | 秋 | 冬 | |
---|---|---|---|---|
景気 | 回復 | 過熱 | 減速 | 後退 |
金融政策 | 様子見 | 利上げ | 様子見 | 利下げ |
長期金利 | 上昇 | やや上昇 | 低下 | やや低下 |
短期金利 | 横ばい | 上昇 | 横ばい | 低下 |
長期-短期 | 拡大 | 縮小 | 縮小 | 拡大 |
金利は資金需要が高まる春~夏に上がり始め、資金需要が減退する秋~冬に下がり始める傾向にあり、長短金利差は夏と秋に縮小し、冬と春に拡大する傾向にあると言われています。
夏の終わりに長短金利差がプラスからマイナスに逆転すると景気減速が近いというシグナルと見ることができるそうです。
また、ビットコインにも季節のアノマリーがあります。(検証済み)
- 1月中旬~2月前半に暴落傾向(半減期年を除く)
- 3月は下落傾向
- 4月は上昇傾向
- 5~6月は上昇傾向
- 8月は下落傾向(夏枯れ相場)
- 10月は強い上昇相場
- 11月~翌1月は下落(調整)相場
ぱっと見、金利とビットコインのアノマリーにはやや逆相関があるように見えます。
米株価と金利はそこまで連動していない?
一般的に、長期金利が下落(上昇)した場合、株価は上昇(下落)するという逆相関の関係にあると言われています。
例えば長期金利が3%から1%に下落した場合、多くの投資家は銀行に預けておくよりも株式投資を行った方が値上がり益(キャピタルゲイン)のリターンがあると考える…
長期金利が1%から3%に上がった場合、多くの投資家が、リスクの大きい株式投資よりも銀行に預ける受取利息(インカムゲイン)を得る方が安全で確実に儲けられると考える…
資金還流が起こるという仮説ですね。
実際にチャートを比較して見るとそうでもない…
例としてダウ平均株価指数(DJI)、NASDAQ総合指数(NDAQ:ハイテク株代表)、と米国債10年金利(US10Y)の10年間のチャートを比較してみました。
米金利にトレンドが発生しているところを青枠で囲ってみたのですが、実際に見てみると株価指数と長期金利はあんまり逆相関の関係がないように見えます。
米長期金利とドル円は相関関係にある
また、米長期金利とドル円は相関関係にあり、米金利の動きに左右されやすいと言われています。
10年の動きを見てみると、確かに相関していますが、コロナショック後は外れているので、今後も機能していくかは不明。
金(ゴールド)と米長期金利は明らかな逆相関にある
長期金利と米株価が実はそんなに連動していないというのを先ほど説明しましたが、実はゴールド価格と長期金利には強い逆相関があります。
これは、米国の金利が上昇すると信用力の高い米ドルの魅力が高まる一方、安全資産とはいえ、配当や利子を生まない金(ゴールド)の魅力は薄れて売られ、金価格が下落するという流れからです。
10年間のゴールド価格と米長期金利10年債のチャートを比べてみると、明らかな逆相関関係が確認できます。株価なんかより明確に逆相関があります。
そもそもゴールドは米ドル建てで主に取引されているため、米ドルの価値が下がれば、金価格が相対的に上がり、逆もしかりという動きが顕著に出るそうです。
ビットコインが受ける米長期金利の影響は限定的である
米長期金利と米株価があまり連動していないというのはさきほどご紹介しましたが、最後にビットコイン・長期金利・ゴールド・ドル円を並べた10年分のチャートから比較してみます。
過去のチャートを見る限り、ビットコイン価格と米長期金利は逆相関ではありません。
むしろドル円とビットコイン価格の方がやや逆相関しており気になります。
ビットコインはデジタルゴールドとも呼ばれることがありますが、ビットコイン価格とゴールド価格に一貫した相関関係はないように見えます。(むしろ最近では逆の動きをしている)
2020年のコロナショック後は一貫してトレンド相場なので比較しやすいですが、コロナ後のチャート(2020年3月~)だけを見ると、ビットコイン価格と米長期金利はむしろ相関関係にあることがわかります。
一時的に逆相関の動きをしても限定的であると考える方が合理的。
一方ビットコインと株価の相関は強くなっている
ビットコイン価格と米株価指数(ナスダック総合株価指数・S&P500)を比べてみると、2020年初頭から明らかな相関関係が見られます。
この理由は簡単なことで、BTCを保有する大企業や上場企業(Tesla、Paypal、マイクロストラテジー、スクエア、グレイスケール、ギャラクシー等)が増えたことで株式市場と資本的な繋がりが濃くなったからです。
流動性のあるビットコイン現物の壮大な奪い合いが始まっているという訳です。
ビットコインと米長期金利の関係まとめ
ビットコインと米長期金利(米国債10年)が逆相関するかどうか検証した結果、そんなことはありませんでした。むしろ2020年下半期からは強い相関関係でした。
また、以下のポイントを覚えておくと市場全体を把握する時に役に立つかもしれません。
- 短期金利より長期金利の方が敏感に市場を反映する
- 金利には季節性のアノマリーがある
- 米金利と米株価は逆相関という訳でもない
- 米長期金利と金価格は強い逆相関にある
- ビットコインと金価格に相関はない
- ビットコインと株価は以前より相関が強まっている
つまり、金利・株価に言われているほど強い逆相関がないので、結果BTC価格にも今のところあまり影響がないといえます。
コロナショック後、世界金融は戦争状態にあるのかというくらい急激な変化を強いられました。
ワクチンも出回り経済活動が正常に戻ろうとしていますが、今後の金融市場全体の動向、どの銘柄がどう相関してくるのか、しっかり見極めていく必要がありますね。
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