今回は、ビットコインの取引所全体の資金流入など便利な仮想通貨市場オンチェーンデータをチェックすることができる「CryptoQuant(クリプトクワント)」の見方・使い方をご紹介します。
取引所からのBTC流出がビットコインバブルの前兆だった可能性をいち早く察知するなど、有用なデータ分析に今後も役立てられそうです。
CryptoQuant(クリプトクオント)とは
CryptoQuantは、世界の主要な仮想通貨取引所の資金流入・流出などオンチェーンデータを配信してくれている市場データプロバイダーです。
公式サイト | cryptoquant.com Telegram twitter |
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国 | 韓国 |
CEO | Ki Young Ju 주기영 |
ビットコイン(BTC)をメインとして、イーサリアム(ETH)やステーブルコイン市場、SUSHI・UNIなどのデータも公開されています。
無料プラン(ベーシックプラン)の場合、7日遅れ・過去一年間のデータしか見れません。リアルタイムデータは有料プランにすれば見れるとのこと。
公式SNSで市場データ分析を配信している
公式テレグラム「CryptoQuant Digest(英語)」では、CryptoQuantが提供しているデータを使った市場分析を定期的に配信、公式Twitter(@cryptoquant_com)でも市場分析を定期ツイートしています。テレグラム「CryptoQuant Alerts」では大口送金情報を配信してくれます。
無料会員登録で十分使える
メールアドレスを登録してログインしないと多くのデータが見れませんが、無料で十分使えるので捨てアドレスでも登録しときましょう。
有料版ではより詳細なチャートやAPIが使える
CryptoQuant有料版は遅延なし、全期間のプロチャート機能が使えるとのことです。私は9ドルのプランに課金しています。
CryptoQuantのAPIで流入フローやインジケーターをBOTストラテジーを組みたい等は、有料プラン(プロフェッショナルかプレミアム)に契約する必要があります。
無料でもアラート機能一つだけ設定可能
有料会員では同時に設定できるアラートが増えますが、無料会員でもアラートを一つだけなら設定可能です。
アラートはTelegram、登録メールアドレス、ブラウザ上で通知を選べます。
有効なアラートの設定方法としては、All exchange(主要取引所)で成行売り出来高が1.5憶ドルを超えると短期の底値となる規則性があったので、「BTC:All Exchanges Taker Sell Volume」で「Taker Sell volume」が150000000$を超えたら通知する、というようなアラートが有効だと思います。
CryptoQuantチャートの見方
様々なデータの共通した見方をざっくり解説します。
お気に入り登録機能が便利
グリーン箇所の☆マーク、お気に入り登録がすごく便利です。
これは重要だと思うデータをお気に入りに登録しておけば、効率よく指標を監視することができるようになります。(無料)
アラートの設定は有料プランでできる。
タイムフレーム
無料データではプロチャートが使えないので3つのタイムフレームのみ選択できます。
- Day:日足
- Hour:8時間足?
- Block:1時間足(データの最小期間)
とのことです。
チャート
カーソルを合わせると時間と各数値が表示されます。
CryptoQuantデータ:取引所インフロー/アウトフロー
「Exchange Flows」で見ることができる主要データの見方を解説します。
All Exchange Reserve | 主要取引所に保管されているBTC数量 |
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All Exchange Netflow | 主要取引所に流入・流出するBTCの差 |
All Exchange Inflow | 主要取引所に入金されたBTCの合計額 |
BTC: All Exchanges Inflow Mean (MA7)プロチャート
これは主要なBTC取引所に流入したBTC総数を表します。この増加は通常、取引所でBTCが売却される傾向を示すため弱気の指標とみられます。※プロチャート、有料会員のみ
しかし、流入が過剰な場合(緑ゾーン到達時)には別の意図を感知するのか、逆に大きな上昇トレンドの開始になっている可能性があります。
All Exchange Outflow | 主要取引所から出金されたBTC数量 |
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Spot Exchange Inflow | 主要現物取引所に入金されたBTC数量 |
Derivative Exchange Inflow | 主要デリバティブ取引所に入金されたBTC数量 |
Derivative Exchange Netflow | 主要デリバティブ取引所に流入・流出するBTCの差 |
Spot Exchange Netflow | 主要現物取引所に流入・流出するBTCの差 |
BTC: Coinbase Pro Outflow
各主要取引所のインフロー・アウトフローも見れるのですが、特に指標になるのは「BTC: Coinbase Pro Outflow」です。
Coinbaseからの大規模BTC出金は機関投資家のOTC取引需要と見られ、過去これが起きたときは強い上昇トレンドのサインとなっています。
CryptoQuantのインジケーター
「Indicator」で見ることができる主要データの見方を解説します。
All Exchange Fund Flow Ratio | 全BTC送金に対する取引所が絡んでいる比率 |
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All Exchange Whale Ratio | 取引所の総流入量に対する上位10大口トランザクションの比率 10EMA> 0.48→買いシグナル(クジラは売りたくない) 10EMA<0.38→売りシグナル(クジラは売りたい) |
Miner’s Position Index(MPI) | 1年間の移動平均に対する全マイナーウォレットのBTC残存比率。2を超える値はほとんどのマイナーが売却していることを示す。 |
また、マイナーは採掘したBTCを天井付近で売却しているようです。ただ、マイナーの売り圧だけで相場を操作できる程ではないので、相場下落には他に理由があると思います。
All Exchange Stablecoins Ratio(USD) | 全取引所が保有するBTC全額を、保有するステーブルコイン全額で割った比率。長期シグナルとして有効。 |
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Stablecoin Supply Ratio(SSR) | 全ステーブルコイン時価総額に対するBTC時価総額の比率 |
All Exchanges Estimated Leverage Ratio | 取引所全体の推定レバレッジ比率、全取引所の建玉をBTC保有額で割ったもの |
Derivative Exchanges Stablecoins Ratio(USD) | デリバティブ取引所が保有するBTC総額をステーブルコイン総額で割った比率 |
Spot Exchanges Stablecoins Ratio(USD) | 主要現物取引所が保有するBTC残高を、保有するステーブルコイン残高で割った比率 |
Binance Stablcoins Ratio(USD) | Binanceが保有するBTC残高を、保有するステーブルコイン残高で割った比率 |
All Exchanges Estimated Leverage Ratio
大きな上昇相場では、レバレッジ比率が下がりながら価格が上がる傾向があります。
レバレッジレシオが下げながら価格上昇していくと、継続的な上昇が期待できると考察できます。
またレバレッジレシオが2に迫るほど高騰していると、価格の調整下落が近いうちに来ると予想することができます。
Stablecoins Ratio (USD) プロチャート
2019年以降、緑ゾーンでのゴールデンクロスはbuyシグナルになっています。※プロチャート、有料会員のみ
CryptoQuantのネットワークデータ
「Network Data」で見ることができる主要データの見方を解説します。
Active Address Count | アクティブアドレスの総数 |
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Fees Total in USD | ビットコインマイナーに支払われる手数料の合計 |
Velocity | BTCが経済の中で流通している速度 |
Tokens Transferred | 転送されたビットコインの数 |
New Supply | 新しく発行されたBTCの合計 |
Hashrate | マイナーがネットワーク内1秒あたりに計算する平均ハッシュレート(採掘速度) |
Difficulty | ビットコインの採掘難易度(BTCディフィカルティ) |
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Block Reward in USD | 米ドルで計算されたブロック報酬の合計 |
UTXO Count | 指定されたポイントに存在する未使用トランザクション出力の総数 |
Block Interval | 生成されたブロック間の平均時間(秒単位) |
Block Count | 特定のウィンドウで生成されたブロック数 |
Block Bytes | 生成されたすべてのブロックの平均サイズ(バイト単位) |
CryptoQuantのマイナーフロー
「Miners Flows」で見ることができる主要データの見方を解説します。
All Miners Outflow | 全マイナーのウォレットから転送されたBTC合計量 |
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Miners Position Index(MPI) | 1年間の移動平均に対する全マイナーウォレットのBTC残存比率(前述) |
Small Miner Outflow | 小規模マイナーのウォレットから転送されたBTC合計量 |
CryptoQuantのBank Flow
「Bank Flow」で見ることができる主要データの見方を解説します。
Blockfi netflow
CryptoQuantのBlockfi netflowを見ると、大き目のビットコイン下落(調節)が来る時には、大口のBTC出金が確認できます。今後も下落シグナルになるかもしれません。
BTC: BlockFi to All Exchanges Flow
これは「Bank Flow」ではなく「Inter Entity Flows」から見ることができる指標なのですがBlockfiつながりなのでここに載せます。
主要取引所からblockfiに入金されたBTC現物の数量トランザクションは、主にレンディング目的で送金されるわけなので長期保有され非流動的になるということで、買いサインとみることができます。実際に大口トランザクションが確認された後BTC価格は上昇しています。
その他にもBlockfi関連のトランザクション分析指標があります。
CryptoQuantのエンティティ間フロー
「Inter Entity Flows」で見ることができる主要データの見方を解説します。(※エンティティとは同じ個人/機関によって制御されるネットワークアドレスを指す)
All Miners to All Exchanges Flow | 全マイナーから全取引所に送金したBTC合計額 |
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All Miners to All Exchanges Transaction Count | 全マイナーから全取引所への送金件数 |
All Miners to All Exchanges Flow Mean | 全マイナーから全取引所に送金したBTC平均量 |
All Miners to Derivative Exchanges Flow | 全マイナーから全デリバティブ取引所に送金したBTC合計金額 |
All Miners to Spot Exchanges Flow | 全マイナーから現物取引所に送金したBTC合計額 |
Huobi Global to Binance Flow | HuobiGlobalからBinanceに送金されたBTC合計金額 |
CryptoQuantの市場データ
「Market Flows」で見ることができる主要データの見方を解説します。
Coinbase Premium Index | Coinbase Pro価格(USDペア)とBinance価格(USDTペア)のギャップ。プレミアムが高いときCoinbaseからクジラ現物買い圧力か。 |
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All Exchanges Futures Open Interest | すべての取引所のBTC/USD、BTC/USDTペアの未決済建玉(単位:USD)→未決済建玉(OI)とは? |
BitMEX Futures Open Interest | BitMEX BTC/USD銘柄の未決済建玉(単位:USD) |
Binance Futures Open Interest | Binance BTC/USD銘柄の未決済建玉(単位:USD) |
Bybit Futures Open Interest | Bybit BTC/USD銘柄の未決済建玉(単位:USD) |
All Exchanges Long-Short Ratio | 全取引所における永久スワップ取引のショートポジション量で割ったロングポジション量の比率。 |
Coinbase Premium Index
Coinbase Pro価格(USDペア)がBinance価格(USDTペア)に対してプレミアムが発生したことで大口投資家の買い圧を観測(テスラ社か?)その後大きくBTC価格が上昇しcoinbaseの現物取引が相場をけん引しました。
また2022年7月時点でのBTC下落相場で、指標が常時マイナスプレミアムとなり、弱気相場を見る指標として機能しているかもしれません。
CryptoQuantのファンドデータ
「Fund Data」で見ることができる主要データの見方を解説します。
GBTC: Grayscale Bitcoin Holdings | グレイスケールビットコイントラストが保有するBTCの合計額 |
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GBTC: Premium (%) | 市場価格(GBTC)とネイティブ資産価値(BTC)の%差。プレミアムが高いほど米国の強気を示す。8%を下回ると買いサインか。 |
GBTC: Market Volume | GBTCの取引量 |
GBTC: Price | GBTCの調整後終値は、企業行動を考慮した後の値を反映 |
その他オススメCryptoQuantデータ
ETH2.0
ETH 2.0 Staking Rate (%) | ETH2.0ステーキングされた残高を総供給量で割った比率 |
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Phase 0 Success Rate (%) | ステーキング中の有効残高を524,288ETHで割った比率 |
Total Value Staked | ステーキング中の有効なETH残高 |
All Stablecoins: All Exchanges Inflow Transaction Count
全取引所へのステーブルコインの入金件数を監視するインジケーターです。
これはプロチャートなので短い時間軸で表示できているのですが、半日前からステーブルコイン入金が相次ぎ、BTCが買い支えられて(買い集められて)ているように見えました。
そして実際この後BTC価格は急上昇しました。
Stablecoin market data
ステーブルコインであるUSDT(ETHチェーン)、USDT(Omniチェーン)、TUSD、USDC、PAX、DAIの時価総額と供給(償却)ペースが一目でわかるようになっています。
CryptoQuantに関するQ&A
CryptoQuantは無料で利用できますか?
はい。
無料でも閲覧できるデータはあります。
しかし有料会員しか閲覧できない有用なデータが豊富なので、オンチェーン分析したいのなら有料版をオススメします。
CryptoQuantにモバイルアプリはありますか?
いいえ。
現時点ではモバイルアプリはないようです。モバイルからブラウザで使います。
CryptoQuantのデータは信用できますか?
はい。
CryptoQuantのオンチェーンデータは一部TwitterなどSNSでも紹介されていますが、他のデータプロバイダーの提供するデータとも誤差はほとんどなく、正確なデータの抽出に尽力されています。
CryptoQuantのまとめ
ビットコインの取引所流入データなどオンチェーン分析ができるCryptoQuant(クリプトクオント)の見方・使い方を解説してみました。
無料で使える機能だけでも十分便利に利用できると思うので是非使ってみてください。
コメント欄
いつも貴重な情報有難う御座います。
Tweetされていた件(2月3日にロック解除)について教えて下さい。
昨日現在(1月29日)はグレースケールは私募停止の状況にある(あった)のでしょうか?
また、私募停止や解除はどのようなロジックで行われるものなのでしょうか?
ロック解除というのは、グレースケール社の投資信託GBTCは購入後6ヶ月間キャピタルゲイン税の関係で一般投資家など流通市場に売却することができません。つまり、グレースケールで大規模な現物買いが起きてちょうど6か月後に「大規模なロック解除」と定義されたイベントが発生することになります。
私募停止というのは、新規の投資家の購入を停止しているということで既存の購入者は引き続き買えるようです。(ちなみに今は停止していない)
「私募投資信託」は、比較的少人数の適格機関投資家を対象として安定運用を目指す投資信託のことを指します。
私募停止がある理由は、新規の機関投資家の受け入れを制限することで、運用パフォーマンスをコントロールしているのではないかと思います。(たぶん)
分かりやすい説明ありがとうございます。
公式サイトの日本語訳の問題もあると思いますが、料金プランについて教えていただきたいです。
アドバンスとプロのアラート以外の明確な違いは何でしょうか?
プロとプレミアムの24時間の解像度とブロックレベルまでの解像度のデータAPIとはわかりやすく言うとどんな違いなのでしょうか?
よろしくお願いします。
アドバンスとプロのアラート以外の明確な違いは、オンチェーンデータを日足でなく1時間足で見ることが出るようになります。
プロは基本的に日足レベルで表示されますが、プレミアムはよりリアルタイムにデータを見ることができます。
また、APIを使ってオンチェーンデータを利用したBOTを作る場合、APIの出力回数に制限がないプレミアムに加入することが半ば必須となります。
分析だけしたいならプロ、BOTを使うならプレミアム、という感じです。