ビットコインの値動きを予想するにあたって有効といわれている先物間の価格乖離「順鞘(コンタンゴ)」と「逆鞘(バックワーデーション)」がビットコイン価格にどのように影響しているのか、その見方とトレードでの利用方法をご紹介します。
先物価格と現物価格の価格差に生じる剥離が順ザヤの場合をコンタンゴ、逆ザヤの場合をバックワーデーションと呼びます。
順ザヤ売りの逆ザヤ買い、という投資格言がありますが、これらがビットコインチャートでも影響を与えることはすでに実証されています。
金融商品によってコンタンゴ、バックワーデーションの解釈は異なるのですが、ビットコインに関しては勝率の高いトレードが実際にできているので是非読んでみてください。
※この記事は@Nishi8maru氏のツイートから知見を頂き執筆しています。
コンタンゴ(順鞘)の価格乖離とは
コンタンゴ(Contango)とは元々、主に商品先物・オプション取引で使われる用語です。
先物の限月(げんげつ)間で、決済期日が短いもの(期近物)ほど価格が安く、長いもの(期先物)ほど価格が高くなる状態を値段の開きが本来あるべき状態という意味で、コンタンゴ(=順ざや)といいます。
一般的に、金利コストや保管コストなど現物保管に必要な費用が時間経過によってかさんでいくという理屈で、期先物の価格の方が高いのが正常な状態、コンタンゴ=順鞘の状態です。
長期保管にはコストがかかるから、そのコスト分将来の売値も高くなるということです。
ビットコインはマイニングに電気代や設備投資というコストが掛かります。
食品や原油なんかは管理する貯蔵庫とか施設のランニングコストがかかることが容易に想像できるのでイメージし易いですね。
ビットコイン価格のコンタンゴを調べる方法
今のところ、大手海外ビットコインFX取引所BitMEXとOKXが複数の限月先物を扱っており指標になります。
BitMEXに絞って説明しますがビットコイン無期限先物(XBT/USD)の他に、ビットコイン四半期先物(限月先物)の合計2種類のビットコインFXがあります。
下の画像はBitMEXのトレード画面に表示されているビットコイン先物価格一覧で、左から「無期限先物」「限月(期近物)」「限月(期先物)」と並んでいます。それぞれの日付は満期日を表しています。
この3つの価格の関係性が無期限<期近物<期先物である場合、ビットコインの順鞘(コンタンゴ)であると言えます。
ビットコイン価格もコンタンゴ(順ザヤ)が、正常な価格剥離であると言われています。
バックワーデーション(逆鞘)の価格乖離とは
バックワーデーション(Backwardation)は、コンタンゴとは逆の状態です。
決済期日が長い(期先)よりも、決済期日が短い(期近)価格の方が高い状態のこと。
つまり、先物の限月間で、決済期日が短いもの(期近物)ほど価格が高く、長いもの(期先物)ほど価格が安くなる状態を価格が正常と逆の状態という意味で、バックワーデーション(=逆ざや)といいます。
本来ならば、管理コストなどを加味して高いはずの期先物(BitMEXでいえば6か月先物)の方が安いので、逆鞘と呼ぶのです。
一般的に、バックワーデーションの原因としては、異常気象や大規模な事故など何らかの突発的な材料によって需給が切迫した場合に起こる現象といわれています。
原油が上昇してた2017年はOPEC減産で典型的なバックワーデーションでした。
ビットコイン価格のバックワーデーションを判別する方法
今のところ、世界最大のビットコインFX取引所BitMEXで扱っている複数の限月先物価格を見ることでバックワーデーションを判断します。
下の画像のように、BitMEXトレード画面の表示価格が無期限>期近物>期先物の順になっていたら逆鞘(バックワーデーション)です。
順鞘・逆鞘がビットコイン価格にどう影響するのか?
電気代や設備投資でコストが掛かるはずのビットコインマイニングは、マイナーによる売り圧が潜在的に付いて回ります。
なのでコンタンゴ(期先物の方が高い順鞘)が正常な状態であり、実際にコンタンゴになっている時の方が多いです。
ではなぜ(災害や事故でもないのに)バックワーデーションが起こることがあるのでしょうか?
それは市場で出回っているビットコイン現物の枯渇、もっと下落するだろうという市場の過度な弱気、または大口による価格操作が考えられます。
市場でビットコイン(BTC)が枯渇する理由
先日起こったバックワーデーションを例に以下のように理由をまとめました。所説あると思います。(ココスタの記事、また@Nishi8maru氏のツイートを参考にさせて頂きました)
- 世界主要国の金利が低下することでビットコイン投機需要が増加
- BlockFi等(※)のようなBTC担保差入型高利回り商品の証拠金・担保需要で現物が買われる
- 上記商品の担保BTCの価格変動対策として両建てショートヘッジ増加(空売りにBTC現物借入が必要)
- 先物ショートが急激に増加しバックワーデーションが発生
- BitMEX・bitfinexなどでロング有利の金利になる
- ロング有利の相場となり大口やアルゴによる買い仕掛け→価格高騰?
※BlockFi(ブロックファイ)は、BTCやETHなど仮想通貨の預入で年利6%の金利が付くという仮想通貨を担保とした法定通貨の貸付サービスを提供しているニューヨークの会社。日本のリクルートも出資している。個人だけでなく、仮想通貨送金事業者やICO企業、仮想通貨交換業者、マイニング事業者等多くの事業会社に利用されている。
ビットコインなど仮想通貨を預けると金利がもらえるレンディングサービスが世界中で増えています。
このようなビットコイン現物預け入れローンサービスの拡大に伴って、ビットコイン価格の下落リスク回避として、現物買いと同時に先物BTCを売っておくというわけです。
そうすれば、BTCの値下がりリスクは負わず金利だけを得ることができるからです。
ここでバックワーデーション(逆鞘)が発生しやすくなります。
ビットコイン先物でショートが増加した結果、将来の価格を安くすることで、相対的に現在のビットコインを高くするという状態になり、上昇相場が生まれます。
イギリスの暗号通貨市場データ分析プラットフォームskewの分析によると、やはり証拠金(預け入れ)需要によりビットコイン現物が枯渇気味、バックワーデーション(逆鞘)になったことが報告されています。
また、USDTの発行総額(時価総額)の上昇で、ビットコインの買い需要が高まっている場合にもバックワーデーションが発生しやすくなると思われます。
USDTの時価総額の値動きがBTC価格の下落・上昇に影響を与えているという分析を先日紹介しました。
USDT新規発行増加→BTC現物買い需要→相対的にBTC先物の価格下落→バックワーデーション発生?
という流れが考えられます。
順鞘・逆鞘をビットコインFXトレードに生かす戦術
ビットコイン価格は、たいていの場合コンタンゴになっている気がします。
コンタンゴになっているからと言って価格が下落するというわけではないです。いつも下落してたらやってられんですからね。
ですが、現物がひっ迫してると出やすいバックワーデーション(逆ザヤ)時には、ロング有利な相場が何らかの理由で発生していると考えられます。
つまり、ビットコインFXに関しては、バックワーデーション時に有効な戦略になります。
コンタンゴでももちろん参考になりますが、期待値が高いという意味です。
過熱相場では先物間の価格乖離が開く
先日のコロナショックでは、大暴落が起き極度の逆鞘(バックワーデーション)になりました。相場がどれだけ過熱しているのか測る尺度になります。
投資格言「逆鞘に売り無し」
「順ザヤ売りの逆ザヤ買い」という投資格言があります。
以下の動きに素直に従って売買せよ、という法則です。
順鞘(コンタンゴ)時 | 期先物(6か月先物)の方が期近物(3か月先物)より高いので、時間の経過で期近物に回れば徐々に安くなるという理屈。 |
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逆鞘(バックワーデーション)時 | 期近物(3か月先物)の方が期先物(6か月先物)より高いので、安い期先物を買っておけば徐々に高くなるという理屈。 |
つまり、バックワーデーション時には、相対的にビットコイン現物の価格が高くなるという現象が発生し、ロング有利な市場(金利などが)になるので、価格が上昇しやすいということです。
コンタンゴ時 | ロングは控え、ショート戻り売り主体でトレード |
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バックワーデーション時 | ショートは控え、ロング押し目買い主体でトレード |
とくに、バックワーデーション時にはショートはせず、ロング主体のトレードをすることをおすすめします。
資金調達率(Funding rate)も参考にするべき
その時、BitMEXの資金調達率がロング受け取りになっているのか、ショート受け取りになっているのかも重要です。
- コンタンゴ時にショート受け取り
- バックワーデーション時にロング受け取り
になっていたら金利の足並みも揃っているのでより強気にトレードしていいと思います。
先日の大暴落時は売りが過熱し、ロング受け取りMAXとなりました。
また、bitfinexの金利も以前より影響度は減りましたがチェックです。
- BTC金利の方が高い→ロング有利
- USD金利の方が高い→ショート有利
とみることができます。金利は各取引所やDECOBOARD・DECOCHART等でもチェックできます。
ビットコイン先物価格乖離まとめ
仮想通貨ビットコイン先物のコンタンゴ・バックワーデーションが価格に与える影響とFXトレード戦術について解説してみましたがいかがでしょうか。
原理はややこしいですが、とりあえず覚えておいて損はないのは
ということです。
ビットコイン先物の価格乖離が意味することを理解しておくと、市場心理や価格予想の精度が格段に上がります。
バックワーデーションが発生しているときにはロング主体でショートは控えるようにする、これだけでも負けにくくなるはずです。
是非トレードに取り入れてみてください。
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